新しい時代の教材はどう在るべきか
以前から「理科の授業では、教材の工夫が大切である」とされてきました。
教育実習で指導教員から教材の重要性を説かれたり、新規採用の時代に毎日夜遅くまで教材の工夫をしたりした経験のある方もいるでしょう。実際のところ、日々教材の工夫を行いながら、授業に臨んでいる方が大部分だと思います。
教材の工夫は、授業づくりの中で中心的なものの一つですが、教材そのものへのアプローチは様々です。単なる授業の準備、予備実験とは異なります。子どもたちの関心や意欲、教材開発、発問、思考の流れなど、教材の工夫を通して大切にしていることやこだわりをもっている人も多いことでしょう。それらの教材は、改良を繰り返して洗練された形になっているはずです。しかし、学習指導要領の改訂や時代の進展に伴い、教育内容や方法の改善が進むと、伝統的な教材よりもよいものが登場してきます。また、初任者のときと中堅・ベテランとなってからとでは、教材の工夫の方法や内容も変わってくるでしょう。
さらに、普及期から浸透期に入り、すでに普段使いがされている1人1台端末の存在は大きいです。端末の存在を前提として理科の授業を考えたとき、教材の工夫の在り方が変わります。例えば、学習支援アプリは、個別最適な学びや協働的な学びに効果を発揮するでしょう。また、他校や博物館などの外部機関と連携した授業や出前授業では、事前・事後の打ち合わせ段階から役立ちます。1人1台端末が、教材の工夫の範疇を捉え直させているとも言えるでしょう。
『理科の教育』編集委員会が2023年8月及び9月に開催した公開編集委員会では、「教材の工夫」というテーマのワークショップを行いました。参加者からは、最近の教材の様々な工夫が紹介されました。子どもの気付きを丁寧に生かすために従来の教材を工夫した事 例、地層を3D化して可視化する最先端のアプリを使った事例、特別な支援を要する子どものために100円ショップの商品を活用した事例など、キラリと光る報告がいくつもありました。また、工夫した教材を紹介するサイトを作成し、情報の共有を目指しているという報告さえもあったのです。
そこで、本特集では、最近の経験や事例、エピソードなどを紹介し、教材の工夫について考える機会にしたいと思います。
(『理科の教育』編集)