SAO ピンチは、その名のとおり物干し竿用のピンチ(洗濯ばさみ)です。直径 30〜38mmの物干し竿で使うことができます。
丸っこい曲線のフォルムが印象的ですが、あれ?洗濯ばさみにあるはずの、つまみ部分が見当たりません。
「トップリングという、大きな輪の部分を持って竿に押し込んでください」
SAO ピンチを開発したイメージクラフトの今瀬満さんの指示のとおりに、SAO ピンチを竿に押し込んでみると...竿に当てた部分が開いてスッと竿に固定されました。
軽く揺らしても外れそうにありません。ただ押し込んだだけなのに、抜群の固定力に驚きです。
今度は「トップリングをつまんで、竿に手をかける感じで軽く捻ってみてください」と、今瀬さん。
言われたとおりにしてみると、SAO ピンチは自然と竿から外れました。またまた驚きです!
「SAO ピンチの最大の特徴は、着脱が簡単で固定力が高いこと。1 個あれば、フェイスタオルなどを固定できます。幅の広いバスタオルや、大きな毛布などは 2〜3 個使うと安心ですね」
SAO ピンチに使われているのは、ステンレスのばね材です。「力が加わるとしなり、力が取り除かれると元に戻る」という、ばね材ならではの特性が、着脱のしやすさと固定力の高さの実現に一役買っているのです。
「広く出回っているものには、強くつままないとしっかり開かないものも少なくないですよね。形状も、かさばるものが多いです。プラスチック製の場合、外に出しっぱなしだと経年劣化やすいのも難点かと思います。こういった従来品の弱点を塗り替えるようなものをつくりたいと、SAOピンチをつくりました。シンプルな造りですが、一度使ってみたらきっと驚いてもらえると思いますよ」
SAO ピンチをはじめ、イメージクラフトのステンレス製品は、この道 60 年以上のベテランばね職人・安江章一さんと今瀬さんが共同で開発したもの。
洗濯ばさみ屋として豊富な経験を持つ今瀬さんがアイデアを出し、ばねの性質を熟知した安江さんがアイデアを形にする、まさに二人三で製品開発をしてきた賜物なのです。
「多用途なところも、SAO ピンチの特徴」と語る今瀬さん。
例えば、物干し竿に直接固定してトップリングや下部のボトムリングにハンガーを引っかければ、ハンガーストッパーとしても使用できます。
薄い形状なので、ブックマークとして使用する人もいるとか。
材料の特性を生かし、形状に工夫を凝らしたことで、洗濯ばさみの用途の可能性を広げたSAO ピンチ。
毎日の洗濯に取り入れたら、もっと快適になるかもしれません。
レポート:伊藤 成美 カメラマン:小池 輝
(2022年1月24日掲載)