出版社内容情報
FileMakerPro を用いた大阪医療センターの病院情報システム。苦労して開発した成果をここに公開します!2011年に『医療現場のデータベース活用』という書籍が発売されました。この本は、使いにくい病院情報システムへの対処法を集めたものです。収載されている事例では、それぞれの医療機関で何年にもわたって苦労して作られた「ユーザーメードシステム」について解説されており、貴重な体験談を集めています。病院情報システムで苦労している医療従事FileMaker ですぐ役に立つアプリケーションを作れると考えて購入したけれど、そういう目的には役に立たずがっかりしたとの書評もありました。
今回は『医療現場のデータベース活用』の続編として、大阪医療センターという一つの施設に絞ってより詳しく書いてみました。あくまで事例の紹介であり、この本を読んで具体的なアプリケーションがすぐ作れるというわけではありませんが、皆さんが工夫すればこの本に紹介されているアプリケーションと同程度のものは作ることができます。自分でFileMaker を使ってアプリケーションを作ろうとしている人、アプリケーションは作らないけれど製作できる会社に注文して、同様のことを実現したいと考えている人に参考にしていただければと思います。内容を分かりやすくするために、本書の一部に前著と若干重複する部分をいれていますことをお断りしておきます。
他の施設の事例と同様に、大阪医療センターのシステムも診療現場の人々のノウハウの集積であり、何年にもわたって苦労して開発した人々の仕事の成果でいわば小さな発明工夫の集合体ですので、著作権として保護されるべきものですし、特許を取得している部分もありますが、いろいろな医療機関で苦労されている方々の参考になればとの考えで、できるだけ情報提供を試みたつもりです。特許を取得している部分以外の、この本に記載したソフトウエアのデザインについては読者の方が今後同様の仕組みを製作されることをまったく制限するものではありませんが、この本に記載されている情報をもとに同様の仕組みを作成したにもかかわらず、先発の権利を主張することや、その意匠について代価を得ることは避けてください。ここに書かれているものは、すべて完全に動いて業務に使っているシステムであり、そのシステムを動かして得られたデータです。ある程度、病院情報システムの知識があり、FileMaker あるいは類似の機能のソフトウエアを使用すれば誰
でも作れる仕組みですので、読者の今後の参考になれば幸いです。
最後に、本書の執筆にあたってはFileMaker、IT に造詣の深い富田宏昭さんに多大なる協力をいただきました。あらためて御礼申し上げます。
岡垣篤彦
国立病院機構 大阪医療センター
●基本編●FileMaker Proとベンダー製システムを用いた大阪医療センターの病院情報システム
1 病院情報システムの弱点
閲覧性:電子カルテの問題点
2 開発ストーリー
1) 産科電子カルテ
2) 手術支援システム
3) 病床管理システム、耐性菌管理システム
3 公認電子カルテへ
“ハイブリッド”システム
4 大阪医療センター方式の電子カルテの仕組み
5 FileMakerをユーザーインターフェースに使用する電子カルテ
1) FileMakerがハブとなり周辺システムをコントロール
2) 問診表
3) 人工透析部門システムとの接続?電子カルテのデータは一元的に保存したい:部門システムのタコ壺化を防ぐ
4) 究極の電子カルテ 眼科
5) 究極の電子カルテ 救命救急ER(Emergency Rescue)の電子カルテ
ERでのツイッター形式のデータ入力
ER経過表を参照したカルテへの記載
6) 抗癌剤の表示 -オーダとの連携-
7) 成長曲線
6 FileMakerカルテの評価、診療の質の向上
7 電子カルテの記載に必要な項目と世界規格
8 電子カルテ参照系
1) 基本的な構造
2) 診療台帳を電子カルテとして実装し、参照系で閲覧
3) チーム医療支援システム
4) 外来診療状況把握アプリ
5) 入院状況把握アプリ:栄養指導支援、回診支援
6) 耐性菌感染状況
7) 異なるシステム間のデータ転送、あるいはデータの互換性
9 電子カルテの技術を使った研究
1) 南海トラフ巨大地震に対する医療支援の研究
2) 災害掲示板
3) 災害用電子カルテ
10 病院情報システムを使いやすくするには
1) ウォーターフォールとアジャイル
2) 病院情報システムの仕様書
3) ウォーターフォールしか選択肢がない?
4) ユーザーメード(エンド・ユーザー)コンピューティング
11 ユーザーメードシステムに必要な工夫
1) システムの開発記録をドキュメントとして残す
2) ユーザーメードシステムのガイドライン
12 今後の病院情報システム
改正薬事法はイノベーションを阻害する?
ユーザーメードシステムのガイドライン(抜粋)
附表 紙カルテ、ロールペーパー型、カード型電子カルテの違い
●実践編●病院システムとFileMakerの連携
1 CSVを使用した連携
業務系と参照系データベース
業務系データベース
FileMakerファイルを作業時にダウンロードして使用
参照系データベース
FileMaker Server
MySQL
XML
参照系から業務系に書き込む場合
エンドユーザのUIについて
一般的な電子カルテアプリケーションとの連携について
特殊な電子カルテアプリケーションとの連携について
ファイルの構成について
データベースの構成について
Column 共通化と個別化
外部プログラムとの連携
[Eventを送信]スクリプトステップ
[DDEを送信]スクリプトステップ
[AppleScriptを実行]スクリプトステップ
FileMakerのプラグインを使用
[URLを開く]スクリプトステップを使用
富士通EGMainGXとの連携
CSVを使用した連携 / データの取得時
Column 同期実行と非同期実行
CSVを使用した連携 / データの書込時
Column DDEとAppleScript
2 XMLを使用した連携
XMLを使用した連携
眼科診療録
3 ODBCを使用した連携
ODBC連携
ODBCとは
FileMakerでのODBC活用例
Column セキュリティ設定の確認を
Column FileMaker内でSQL文を使って自在にデータを取得するExecuteSQL
4 画像を使用した連携
画像データの連携
オブジェクトフィールドでの画像表示カスタマイズ例
Webビューアでの画像表示カスタマイズ例
応用例
画像データの生成
Webビューアを利用する場合
外部アプリケーションを呼び出し、結果を取得する場合
プラグインを使用する場合
Column シェーマを自前で実装するには
5 URLを使用した連携
URLを使用した連携
[URLを開く]スクリプトステップ
[URLを開く]スクリプトステップを使用したアプリケーション間連携
Column マルチバイト文字をURLの引数に指定したい場合
Webビューアを起動
Column WebビューアとGetLayoutObjectAttribute関数を用いたデータ取得
[URLから挿入]スクリプトステップ
https、 httpspost、ftpsを利用する上での注意点
6 HTMLを使用した連携
HTMLを使用した連携
外部プログラムでHTMLを処理し、データを取り込む
プログラミング言語を用いて、HTMLから任意の情報を抽出するコマンドを作成する
HTMLからの情報の取り出しに対応したアプリケーションと連携し、結果を取得する
Googleドキュメントなど、データ変換に対応したWebアプリケーションと連携し、FileMakerでレコードのインポートが可能なフォーマットに変換する
FileMakerのプラグインを使用?サードパーティ製のプラグインをインストールしたり、自分でプラグインを開発する
スクリプトや計算式でHTMLを処理し、任意のデータを抽出する
データの取得手順
HTMLからの情報取得手順 - 簡単なHTMLの例
HTMLからの情報取得手順 - Letを使った計算式の簡易化
HTMLからの情報取得手順 - 複数の要素からなるHTMLから情報を抽出
HTMLからの情報取得手順 - 複雑な要素からなるHTMLから情報を抽出
Column ローカル変数とグローバル変数
HTMLからの情報取得手順 - 要素名とidを指定してHTMLから情報を抽出
岡垣篤彦[オカガキアツヒコ]
●岡垣篤彦
国立病院機構大阪医療センター医療情報部長。1983 年京都大学医学部卒。1992 年より国立大阪病院(現、国立病院機構大阪医療センター)。1998 年ごろより、病院情報システム、診療支援システム、電子カルテの開発。2000 年4 月の大阪医療センターの病院情報システムの導入時、2006 年4 月の病院情報システムのリプレースに際しては、全診療科「カード型電子カルテ」の開発を行った。2011 年より現職。2016 年より医療情報学会評議員。
富田宏昭[トミタヒロアキ]
●富田宏昭
1987 年生まれ。FileMaker とオープンソースデータベース、シェルスクリプトなどを活用したWeb アプリ開発に従事。一方で、個人的にオープンソースソフトウェアやFileMakerの記事執筆活動に携わる。好きなツールはzsh、vim、mawk。趣味は横乗り系スポーツ、美術館めぐり、高速ジャンクション鑑賞。FileMaker Japan Excellence Award 2011 PR Driver of the Year。