内容説明
図像解釈学に基づき、インド・チベット・ネパールを中心としたアジアの密教美術を網羅的に考察し、従来の密教美術研究の通説を覆す。
目次
第1部 図像を解釈するために(テキストを読む・図像を読む;仏教学と図像研究)
第2部 インドにおける密教美術の形成(密教仏の形成;オリッサ州カタック地区出土の四臂観音立像 ほか)
第3部 密教仏のイメージの展開(十忿怒尊のイメージをめぐる考察;賢劫十六尊の構成と表現 ほか)
第4部 マンダラの形が表すもの(マンダラの形態の歴史的変遷;観想上のマンダラと儀礼のためのマンダラ ほか)
第5部 忿怒尊と女尊の図像学(感得像と聖なるものに関する一考察;仏教における殺しと救い ほか)
著者等紹介
森雅秀[モリマサヒデ]
1962年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科中退。ロンドン大学大学院修了。Ph.D.(ロンドン大学1997年)。名古屋大学文学部助手、高野山大学文学部助教授等を経て、金沢大学人間社会研究域教授。専門は仏教文化史、比較文化学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
図像解釈学に基づきインド・チベット・ネパールを中心としたアジアの密教美術を網羅的に考察し、従来の密教美術研究の通説を覆す。本書はインド・チベット・ネパールを中心としたアジアの密教美術に関する学際的な研究成果である。図像解釈学(イコノロジー)的な分析を基本としつつ、宗教学・仏教学・文化史学・哲学・考古学などのさまざまな学問領域の研究成果も取り入れ、密教美術研究に新たな局面を切り開く。東南アジアや日本の密教美術についての考察も含み、インドを中心とした南アジアの密教美術のアジア的展開や、それぞれの地域の密教美術がアジア全体に占める位置を明らかにする。
第一部「図像を解釈するために」は、文献学と美術史のそれぞれの分野からのアプローチの方法と、その統合によるイコノロジー的研究の具体的な意義を明らかにしており、本書全体の導入に相当する。
第二部「インドにおける密教美術の形成」では、インドにおいて密教美術が出現した状況とその背景を明らかにする。さらに、その具体例として観音をはじめとする諸菩薩を取り上げる。
第三部「密教仏のイメージの展開」では、インドからチベット、ネパール、そして日本に密教美術が伝播する過程で、さまざまな仏のイメージがどのように変化したかを実証的に跡付けるとともに、その理論化を行った。
第四部「マンダラのかたちが表すもの」では、密教美術の中核をなすマンダラを取り上げ、その形態の変化や儀礼との関係、さらに具体的な形態の持つ意味などを明らかにした。
第五部「忿怒尊と女尊の図像学」では、密教美術を特徴づける忿怒尊と女尊に注目し、とくに忿怒の相や女性像の持つ妖艶さ、さらにはグロテスクなイメージなど、密教美術の有する特異なあり方に対して、その文化史的な意義を解明した。
第一部 図像を解釈するために:第一章 テキストを読む・図像を読む/第二章 仏教学と図像研究
第二部 インドにおける密教美術の形成:第一章 密教仏の形成/第二章 オリッサ州カタック地区出土の四臂観音立像/第三章 インドの不空羂索観音/第四章 エローラ第11窟、第12窟の菩薩群像
第三部 密教仏のイメージの展開:第一章 十忿怒尊のイメージをめぐる考察/第二章 賢劫十六尊の構成と表現/第三章 チベットの大日如来/第四章 ネパールの大日如来/第五章 般若波羅蜜の図像
第四部 マンダラの形が表すもの:第一章 マンダラの形態の歴史的変遷/第二章 観想上のマンダラと儀礼のためのマンダラ/第三章 サンヴァラマンダラの図像学的考察/第四章 時輪マンダラの墨打ち法
第五部 忿怒尊と女尊の図像学:第一章 感得像と聖なるものに関する一考察/第二章 仏教における殺しと救い/第三章 鬼子母神における母と子のイメージをめぐって/
第四章 インド神話に見る残虐な美女の図像学/第五章 地獄絵に見る死とグロテスクのイメージ
文献一覧
図版一覧
初出一覧
あとがき
索 引
森 雅秀[モリ マサヒデ]
1962年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科中退。ロンドン大学大学院修了。Ph.D.1999年高野山大学文学部助教授、2001年金沢大学文学部助教授、2007年金沢大学文学部教授、2008年金沢大学人間社会研究域教授(改組により所属部局名変更)を経て、現在に至る。仏教文化史、比較文化学を専門とする。主な著書に、『生と死からはじめるマンダラ入門』(法藏館)、『エロスとグロテスクの仏教美術』(春秋社)、『チベットの仏教美術とマンダラ』(名古屋大学出版会)、『インド密教の儀礼世界』(世界思想社)、『仏のイメージを読む』(大法輪閣)ほか多数。