内容説明
気候変動対策はまさに喫緊の課題。なかでも森林劣化、減少が著しい熱帯林ではさまざまな対策が取られている。一方で、それによる森林利用形態の変化が、地域の人々の貧困を助長している現実もある。そうしたなか、木を伐らずに得られる木材以外の森林資源=NTFP(Non Timber Forest Products)を活用するというアイデアが生まれ、今注目を集めている。森林を利用してくらしてきた人々の「民俗知」を活かし、新たなくらしをつくることにつなげていく試みの現状と課題を、森林研究者、国際NGO、企業関係者ら15名の執筆者が解説する。
目次
1 なぜNTFPなのか(NTFP生産からみえてくる森林保全・土地利用への道筋;協働による自然資源の保全―NTFPが果たす貧困対策;気候変動緩和策―NTFPシナジー効果)
2 近くて遠いNTFP(NTFPとともに生きる;植物資源の持続的利活用―山採りから、育てる農業へ;ラオスの林産物誌)
3 持続的生産に向けて(NTFPの持続的生産へ向けた情報共有システム構築の試み;森と共に生きる村人―住民林業(Community Forestry)の役割
ミャンマー農山村民の森林利用パターン)
4 NTFPのバリューチェーン化へ向けた試み―いかに販路を拡大させるか、上手に売るか(焼畑移動耕作とNTFP―ヤダケガヤに見るNTFPのグリーンビジネス化への道のり;NTFPの産業化の事例―ラオスにおける白炭産業)
著者等紹介
奥田敏統[オクダトシノリ]
広島大学大学院統合生命科学研究科名誉教授・客員教授。専門は森林生態学。途上国における森林資源の保全と地域住民の相乗便益についての研究に従事
平塚基志[ヒラツカモトシ]
早稲田大学人間科学学術院教授。専門は森林環境科学。ラオス、インドネシア、ミャンマーでの森林減少・劣化抑制(REDD+)に関する研究に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
気象災害の頻発に見舞われる今,気候変動対策はまさに喫緊の課題。SDGsでも,気候変動対策,生物多様性保全の目標が掲げられています。なかでも森林劣化,減少が著しい熱帯林にはさまざまな対策が取られています。しかし,それによって森林利用の形態が変化し,そこで暮らしてきた人々の貧困を助長してしまっている現実があります。貧困,飢餓対策もまた,SDGsの目標であるにもかかわらず。
こうしたなか,森の木を伐らず,木材以外の森林資源=NTFPを活用し,収益を上げるというアイデアが生まれ,木を切らなくても得られる森の生産物「NTFP(Non Timber Forest Products)」が注目されるようになりました。
森林を利用して暮らしていた人々の「民俗知」を活用し,新たな暮らしをつくることにつなげていく試みの可能性と現状,問題点を,森林研究者,国際NGO,企業関係者ら15名の執筆者が解説します。巻末に,重要語を解説した用語集も収録。