内容説明
なぜ人々は、時に声を聞き、他の者から見れば奇妙なことを信じ、現実離れした混乱の時を体験するのだろうか。そして何が支援となりうるのだろうか。
目次
第1部 「精神病」とは何か(本報告書の内容―時として精神病と呼ばれる体験;これらの体験はどの程度一般的なのか;このような体験を精神疾患と見なすのは最良の方法なのか;このような体験は人々の人生にどのような影響を与えるのか)
第2部 原因(生物学―私たちの脳;人生体験とそれが私たちに及ぼす影響;私たちが世界を理解する方法―「精神病」の心理学)
第3部 何が支援となるのか(問題をめぐる共通理解に到達すること;自助、あるいは友人、家族、コミュニティによる支援;専門家による実際面および情緒面の支援;話すこと―心理的支援;投薬治療)
第4部 何を変えていく必要があるのか(メンタルヘルスサービスは何を変えていく必要があるのか;全体として何を変えていかなければならないか)
著者等紹介
国重浩一[クニシゲコウイチ]
東京都墨田区生まれ。ワイカト大学カウンセリング大学院修了。鹿児島県スクールカウンセラー、東日本大震災時の宮城県緊急派遣カウンセラーなどを経て、現在、日本臨床心理士、ニュージーランド・カウンセリング協会員、ダイバーシティ・カウンセリング・ニュージーランド マネージャー兼スーパーバイザー、カウンセラー。専門はナラティヴ・セラピー、スクールカウンセリング、スーパービジョン、多文化カウンセリング
バーナード紫[バーナードユカリ]
東京都渋谷区生まれ。ロンドン大学教育研究所修士課程修了(英語教育)。ワイカト大学教育学部教育研究科ディプロマ修了(カウンセリング)。現在、ニュージーランド在住。翻訳家、コミュニティ通訳士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
なぜ人々は,時に声を聞き,他の者から見れば奇妙なことを信じ,現実離れした混乱の時を体験するのだろうか。最新の研究や当事者の体験談を豊富に引用しながら,精神疾患の「心理的・社会的な側面」に光を当てる。生活上の負担や影響を踏まえた支援のあり方を探り,多元的・複眼的視点からメンタルヘルスの制度改革を説く。
◆推薦のことば
知ることによって,初めて開く扉がある。本書には
「統合失調症の心理療法」をはじめ,たくさんの鍵が
秘められている。扉を開けるために必要なもの,
それはあなたの勇気だけだ。
斎藤 環(筑波大学医学医療系社会精神保健学 教授)
教科書的見解に慣れきった専門家にとっては,
時には自らの常識を揺さぶってみる機会を与えてくれるだろう。
村井 俊哉 (京都大学医学研究科精神医学教室 教授)
◆主な目次
第1部 「精神病」とは何か
第1章 本報告書の内容――時として精神病と呼ばれる体験
第2章 これらの体験はどの程度一般的なのか
第3章 このような体験を精神疾患と見なすのは最良の方法なのか
第4章 このような体験は人々の人生にどのような影響を与えるのか
第2部 原因
第5章 生物学――私たちの脳
第6章 人生体験とそれが私たちに及ぼす影響
第7章 私たちが世界を理解する方法――「精神病」の心理学
第3部 何が支援となるのか
第8章 問題をめぐる共通理解に到達すること
第9章 自助,あるいは友人,家族,コミュニティによる支援
第10章 専門家による実際面および情緒面の支援
第11章 話すこと――心理的支援
第12章 投薬治療
第4部 何を変えていく必要があるのか
第13章 メンタルヘルスサービスは何を変えていく必要があるのか
第14章 全体として何を変えていかなければならないか
はじめに
要旨
専門用語についての注釈
第1部 「精神病」とは何か
第1章 本報告書の内容――時として精神病と呼ばれる体験
精神病を経験するとはどのようなことなのか
体験は個人によって異なる
異なった文化の存在
第2章 これらの体験はどの程度一般的なのか
どの程度の人が「精神病」の体験をするのか そして,どの程度の人が統合失調症と診断されるのか
メンタルヘルスサービスを利用しない人々
第3章 このような体験を精神疾患と見なすのは最良の方法なのか
序論 精神疾患という考え
精神病的体験と通常の体験は,どこで切り離すことができるのか
ごく普通の人も奇妙な体験をすることがある
精神疾患の診断には信頼性があるだろうか――すべての医師がその診断名に同意できるのだろうか
メンタルヘルスの診断には意味があるのか 何か実際の「もの」を示しているのか
疾病と見なすことについての利点と不利点
診断名から離れるよう促す近年の勧告
第4章 このような体験は人々の人生にどのような影響を与えるのか
結果をめぐるばらつき
どの結果が問題となるのか
結果に影響を与えるもの
精神病が暴力を引き起こすという俗説
第2部 原因
第5章 生物学――私たちの脳
序論
遺伝
神経化学的理論
脳の構造と機能
結論
第6章 人生体験とそれが私たちに及ぼす影響
序論
人生での出来事とトラウマ
人間関係
不平等,貧困,および社会的不利
第7章 私たちが世界を理解する方法――「精神病」の心理学
人生における出来事と精神疾患を結ぶ心理的リンク
声を聞くこと,内言,記憶
私たちはどのようにして信条を作り上げ,結論に達するのか
感情と精神病との関係性
精神病的体験がどのように苦悩や障害に発展するか
第3部 何が支援となるのか
第8章 問題をめぐる共通理解に到達すること
フォーミュレーション
何が支援となり得るかを判断すること
第9章 自助,あるいは友人,家族,コミュニティによる支援
序論
友人や家族からの支援
自助と相互支援
第10章 専門家による実際面および情緒面の支援
序論 サービスは何のためのものか
基本的なニーズに的確に対応する
情緒面の支援
就業と雇用
考えを体系化し,動機を保つための支援
早めに支援を受けること
危機における支援
安全を保つ
第11章 話すこと――心理的支援
序論
認知行動療法(CBT)
認知療法
精神的外傷に焦点を当てるセラピーと精神力動的アプローチ
アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)とマインドフルネス
ナラティヴ・セラピーとシステムズ・セラピー
ボイス・ダイアログ
家族への支援
心理療法の利用度の向上
自分に適したアプローチを探し出すこと
結論
第12章 投薬治療
投薬治療にはどのような効果があるか
「抗精神病薬」の問題点
投薬についての協働的な決定
第4部 何を変えていく必要があるのか
第13章 メンタルヘルスサービスは何を変えていく必要があるのか
「医療モデル」の域を超える
家父長主義を協働作業に置き換える
何をすべきかを告げるのではなく,人々が選択するのを支援する
権利と期待を明確にする
措置入院や精神衛生法の施行を削減する
研究の方法を変革する
メンタルヘルスケアの専門家の訓練とその支援方法を変革する
第14章 全体として何を変えていかなければならないか
私たちは皆,同じ場所にいるのだと捉えること――「私たち」と「彼ら」の境は存在しない
予防に焦点をあてる
「メンタルヘルス」を基盤として偏見や差別と闘わなくてはならない
文献
原書 編者紹介
寄稿者紹介
訳者あとがき
【著者紹介】
アン・クック(Anne Cook)
本報告書の主題である種類の体験によって苦悩している人々と,長年にわたってNHS(ナショナル・ヘルス・サービス)で働いてきたコンサルタント臨床心理士。カンタベリー・クライスト・チャーチ大学の応用心理学ソロモンセンターの博士課程主任講師兼臨床部長。ピーター・キンダーマン教授とともに,本報告書の前身にあたる2000年に出版された報告書を共同で編集した。2010年に出版された、英国心理学会・臨床心理学部門の「双極性障害の理解(Understanding Bipolar Disorder)」の共同編集者でもある。
ツイッターアカウント:@AnneCooke14
ブログ:Discursive of Tunbridge Wells