内容説明
自らをシュルレアリストではないと言い放った画家・福沢一郎は、戦争で時代が暗転しつつある1937年、何を発信しようとしたのか。気鋭の研究者たちが精読と調査、思考を積み重ね知と美の巨人が著した奇書『シュールレアリズム』にいまこそ挑む。昭和前衛美術研究の最前線。
目次
第1部 原著編―福沢一郎『シュールレアリズム』(超現実主義の意義及びその史的展開;超現実主義と絵画;超現実主義の先駆;超現実主義とレアリズム;超現実主義と抽象芸術 ほか)
第2部 論文・資料編(原著読解;原著の図版について;編集会議から…原著と「1937年」の意味)
資料編
著者等紹介
伊藤佳之[イトウヨシユキ]
筑波大学芸術専門学群芸術学専攻卒業。富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、群馬県立館林美術館学芸員を経て、2012年より福沢一郎記念館非常勤嘱託
大谷省吾[オオタニショウゴ]
筑波大学大学院博士課程芸術学研究科中退。1994年より東京国立近代美術館に勤務、2016年より美術課長。2014年筑波大学より博士号(芸術学)取得
小林宏道[コバヤシヒロミチ]
多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。(財)多摩市文化振興財団(パルテノン多摩)学芸員を経て、1994年より多摩美術大学美術館学芸員
春原史寛[スノハラフミヒロ]
筑波大学大学院博士後期課程人間科学研究科修了。博士(芸術学)。2001年から2006年、財団法人大川美術館学芸員。2009年から2011年、山梨県立博物館学芸員。2012年、山梨県立博物館学芸員、2013年から2018年、群馬大学教育学部美術教育講座准教授。2018年9月から武蔵野美術大学芸術文化学科准教授
谷口英理[タニグチエリ]
東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。東京藝術大学非常勤講師、大妻女子大学非常勤講師を経て、2011年より国立新美術館に勤務、2015年から同美術資料室長
弘中智子[ヒロナカサトコ]
一橋大学大学院言語社会研究科博士課程単位取得退学。2006年より板橋区立美術館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
昭和前期における前衛絵画の制作者であり論客でもある福沢一郎が、日中戦争開戦前夜の日本で流行した「シュルレアリスム」にみていたものとは何か――。
本書は2013年から4年間にわたって続けられた、画家福沢一郎の最初の著書『シュールレアリズム』(1937年刊)を精読する研究会の成果を世に問うものである。20世紀初頭のパリで産声を上げたシュルレアリスムを日本にいち早く導入した洋画家・福沢一郎が前衛絵画の未来に何を期待したのか、同時代の前衛芸術の展開や思想的背景などを精鋭の研究者たちが多角的に検証した論考集。
第1部では原著『シュールレアリズム』を現代仮名遣いに改め、詳細な注解を付すなど読みやすく復刻再現。第2部では精鋭の研究者が各章の解題を執筆した。前衛絵画運動の指針となった名著の精緻な読解と考究により、日本近代美術史研究の新たな扉が開かれる。
【執筆者】
伊藤 佳之 (福沢一郎記念館)
大谷 省吾 (東京国立近代美術館)
小林 宏道 (多摩美術大学美術館)
春原 史寛 (武蔵野美術大学)
谷口 英理 (国立新美術館)
弘中 智子 (板橋区立美術館)