内容説明
北海道、浦河―襟裳岬に近い海辺の町に共同住居「べてるの家」がある。病気や生きづらさを抱え呻吟の日々を送っていた人びとがここで出会い、集いはじめて二十年余り。メンバーはみずから会社をつくって、日高昆布の加工販売をはじめとする多彩でユニークな活動を展開している。そのモットーは「安心してさぼれる」会社だ。べてるのいのちは話し合いである。ぶつかりあい、みんなで悩み、苦労を重ねながら「ことば」を取りもどした人びとは、「そのままでいい」という彼らのメッセージを届けに、きょうも町へ出かけている。そんなべてるの力にふれるとき、人は自分自身への問いかけに揺さぶられ、やがて深く納得するのである。それぞれの人生を生きていくための、回復のキーワード。
目次
土を食む(マサルの幻聴;共同住居;管理ではなく ほか)
場をつくる(町へ;べてるの家の本;いまのしあわせ ほか)
灯をともす(魔性の女;病気のセンス;人と話すこと ほか)
著者等紹介
斉藤道雄[サイトウミチオ]
1947年山梨県生まれ。慶応義塾大学卒業、TBS社会部・外信部記者、ワシントン支局長、「ニュース23」プロデューサーなどを経て、現在「報道特集」ディレクター
出版社内容情報
★★★第24回講談社ノンフィクション賞受賞!★★★
北海道、浦河。襟裳岬に近い過疎の町に「べてるの家」がある。精神障害を抱える人たちがみずから共同住居と作業所をいとなんで、長い年月が過ぎた。
特産の昆布からさまざまな商品を作って売る。これがべてるの活動の根幹である。そのユニークな自己表現は全国から注目を浴び、地域社会とともに新しい道をさぐる姿に共感が集まっている。
けれども、ここまで来るにはじつに語りつくせないほどの苦労があった。病を持ちながら一人の人間として生きるとはどういうことなのだろうか。べてるでは、効率優先の現代社会とはひと味違う原則が貫かれている。無理はしなくていい。治さなければと焦ることはない。「そのままでいい」のだ。悩みを持つ仲間と語り合い、ともに過ごす。そこには弱さを絆にした豊かな人間関係が息づいている。
なぜこのような生き方が可能だったのか? それを問いはじめた著者を待ちうけていたのは、自分自身の精神の漂流だった。
斉藤道雄(さいとう・みちお)
一九四七年山梨県生まれ。慶應義塾大学卒業、TBS社会部・外信部記者、ワシントン支局長、「ニュース23」プロデューサーなどを経て、現在「報道特集」ディレクター。著書『原爆神話の五〇年』中公新書、1995年、『もうひとつの手話』晶文社、1999年。
書評情報:
週刊朝日 2002.6.7号に、芹沢俊介さんが書評
北海道新聞 2002.5.26 「ほっかいどうの本」として紹介される
北海道新聞 2002.7.5 野田正彰さんが「浦河べてるの家の豊かな「言葉」」と。
「暮しと健康」2002.8 に著者インタヴュー掲載
「ぜんかれん」2002.7(全国精神障害者家族会連合会)発行に紹介される
「精神看護」2002.7 でも紹介