内容説明
治療者が「病気」ではなく「人間」としての患者に評価を下してしまうと、新たなトラウマを生じさせかねない。傷つきやすく、すでに対人不信に陥っている人をさらなる不信に追いやることなく、また、治療者自身にも苛立ちや燃え尽きが生じることがないようにするには、どうすればよいのか?本書では、トラウマに向き合う治療姿勢について深く掘り下げながら、患者・治療者双方にとって最も望ましい関係の持ち方を模索する。
目次
第1章 「不信」という現実に向き合う―治療の土台づくり
第2章 「コントロール感覚の喪失」という現実に向き合う―治療のメインテーマ
第3章 「病気」という現実に向き合う―治療の位置づけ
第4章 「文脈」という現実に向き合う―トラウマの位置づけ
第5章 「身近な人たち」の現実に向き合う―トラウマと対人関係
第6章 「ジャッジメント」の現実に向き合う―燃え尽きを防ぐ
第7章 治療者自身の現実に向き合う―自らの価値観やトラウマ
第8章 「トラウマ体験」という現実に向き合う―ゆるすということ
著者等紹介
水島広子[ミズシマヒロコ]
慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、2000年6月〜2005年8月、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正などに取り組む。1997年に共訳『うつ病の対人関係療法』(岩崎学術出版社)を出版して以来、日本における対人関係療法の第一人者として臨床に応用するとともに、その普及啓発に努めている。対人関係療法代表世話人。現在は対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
トラウマ治療や技法について知っていることと、実際にトラウマの治療ができることとは違う。トラウマ体験者は深い傷つきによって、対人関係における「信頼」に問題を抱えていることが多い。したがって、トラウマ治療において最も重要なことは、個別の治療戦略や技法よりも、治療者の姿勢であるとも言える。患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹するなど、本書はトラウマに向き合う治療者の姿勢について、誰もが納得できる豊かな提言に満ちている。