内容説明
古典論と量子論の境界はあるだろうか?直感に反する不思議な量子の世界。
目次
第1章 原理としての物理学
第2章 粒子と波の二重性:電子の二重人格
第3章 粒子と波の二重性:光子
第4章 光子でもっと探索:ビームスプリッターの活用
第5章 奇妙な遠隔作用:エンタングルメントと非局所性
第6章 量子情報と量子暗号と量子テレポーテーション
第7章 マクロな量子効果:シュレディンガーの猫とレゲットのスクイド
第8章 量子哲学
付録A 量子力学の歴史
付録B 学生のための量子力学実験
著者等紹介
河辺哲次[カワベテツジ]
1949年福岡市生まれ。1972年東北大学工学部原子核工学科卒業。1977年九州大学大学院理学研究科(物理学)博士課程修了(理学博士)。その後、高エネルギー物理学研究所(現:高エネルギー加速器研究機構KEK)助手、九州芸術工科大学助教授、同教授、九州大学大学院教授。2015年九州大学名誉教授。その間、文部省在外研究員としてコペンハーゲン大学のニールス・ボーア研究所(デンマーク国)に留学。専門は素粒子論、場の理論におけるカオス現象、非線形振動・波動現象(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社内容情報
本書は,量子物理学の本質的なアイデアを,主要な量子実験に基づいて解説したものである。登場する実験の大半は,光と物質の相互作用を研究する量子光学の分野のものである。
長年にわたっておこなわれた興味をそそる数々の実験と,そこから明らかにされたミクロなスケールの量子的世界の諸性質に興味をもち,学びたいと思う人々にとって,本書は最適である。
原子スケールのようにミクロなスケールで起こる現象に対して,自然が私たちに強いる考え方は,マクロなスケールの日常世界で起こる物理現象に対する私たちの考え方と大きく異なる。このような2つの考え方の間にある鋭い不連続性や境界を実証するために,本書では選りすぐりの実験を解説している。
本書の目的は,量子的世界の物理学をある“期待”をもって探索することである。
その期待とは,量子的世界が読者の知的チャレンジ心を刺激すると同時に,読者を楽しませてくれる,奇妙で反直観的な現象に満ちあふれているという期待である。
第1章 原理としての物理学
1.1 世界を分ける
1.2 基礎にある物理学
第2章 粒子と波の二重性:電子の二重人格
2.1 マクロの世界とミクロの世界
2.2 量子コイン
2.3 重ね合わせ? 混合?
2.4 光と波,そして,干渉
2.5 電子を使った干渉
2.6 1回に1個だけの電子による干渉
第3章 粒子と波の二重性:光子
3.1 自然の対称性
3.2 光子,そして単一光子の干渉
3.3 遅延選択の実験
3.4 無相互作用測定
第4章 光子でもっと探索:ビームスプリッターの活用
4.1 能動的な光学装置と受動的な光学装置
4.2 2光子をビームスプリッターに
4.3 ホーン―オウ―マンデルの実験
4.4 2つの実験
4.5 奇抜な実験:光子を別の光子で制御
第5章 奇妙な遠隔作用:エンタングルメントと非局所性
5.1 唯一のミステリー?
5.2 収縮と射影に関する注意
5.3 奇妙な遠隔作用:EPRの議論
5.4 ちょっと寄り道:光子の偏光
5.5 EPRに戻る:アインシュタイン―ポドルスキー―ローゼン
5.6 ベルの定理
5.7 不等式のないベルの定理:ハーディとヨルダンの方法
5.8 何を捨てるか.局所性か実在論?それとも両方?
第6章 量子情報と量子暗号と量子テレポーテーション
6.1 量子情報科学
6.2 量子鍵配送
6.3 量子テレポーテーション
6.4 テレポーテーションの実験
第7章 マクロな量子効果:シュレディンガーの猫とレゲットのスクイド
7.1 巨視的なもの,微視的なもの,そして中間的なもの
7.2 量子論の寓話:シュレディンガーの猫物語
7.3 生きている猫と死んでいる猫の干渉:レゲットのスクイド
7.4 デコヒーレンスと境界:なぜ``猫'' はいない?
第8章 量子哲学
8.1 量子力学の還元?
8.2 コペンハーゲン解釈とその不満
8.3 多世界解釈
8.4 デコヒーレンス
8.5 量子意識
8.6 ミステリーは残る
付録A
付録B