出版社内容情報
我らに診断できぬものなし!
東京GIMカンファレンスで実際に提示された症例を題材に、某名作漫画を愛する5人の医師が繰り広げる熱いclinical problem solving! 『medicina』誌で好評を博した異色連載を書籍化。
序 文
俺と『魁!! 男塾』 〜まえがきに代えて〜
本書『魁!! 診断塾』は雑誌『medicina』の同名連載の単行本化である.この連載は「東京GIMカンファレンス」で実際に登場した症例を基にしたclinical problem solving形式の症例検討であり筆者を含む5人の総合診療・感染症の若手医師が時にゲスト医師を交えながらその診断について議論していくスタイルである.そして連載タイトルからもわかるとおり『週刊少年ジャンプ』(集英社)の漫画『魁!! 男塾』*がモチーフである.本連載を企画した際症例検討をどのようなテイストで行うかが議論となり「総合診療の新時代として普通の症例検討集では面白くない.やはり読者がアッと驚くような型破りで魅力的なものにすべきだ」と盛り上がった.そこで『魁!! 男塾』こそ総合診療における代表的バイブルと目す筆者が「それならモチーフは男塾のほかに道はない!」と強く推しメンバーらの承認を得て実現した次第である.
そもそも筆者がこの漫画に心酔したきっかけは通った高校の雰囲気がまさに男塾であり作品に自分の学園生活を重ねたことである.「ゆとり」とは真逆の登場人物たちの生き様に痺れ作中で引用された“民明書房刊の各書籍を求めて学校帰りに新宿の紀伊國屋書店へ立ち寄るも「そのような出版社はない」と一蹴された.諦めきれず神田の古書街を探し回った挙げ句やはり民明書房は存在しないことがわかり小川町の路上で雨に打たれ男泣きしたのは高校時代の懐かしい思い出である.
医師になって改めて総合診療における『魁!! 男塾』の存在意義を思い知ることになる.筆者は総合診療医である.「男塾こそ総合診療である」と感じることが現場を通し多々あった.作中登場するセリフには医師として心を打たれるものが多い.筆者が最も愛するセリフは関東豪学連総長・覇極流槍術の達人である伊達臣人の「委細承知!」である.いかに理不尽・困難な状況でも目の前の状況に言い訳せずただ全力で向き合うという爽快な潔さや余裕がこのたった四字に満ちている.「ガタガタ言わずにとにかくやる」「断らない」というまさに総合診療を体現した言葉であり現在わが獨協医科大学総合診療チームのクレド(信条)の1つにもなっている.
また作中では男塾名物「油風呂」「地獄禅」に始まり「驚邏大四凶殺」や「大威八連制覇」など塾生たちには数々の試練が立ち塞がる.しかしdiversityあふれる彼らは自らの道を貫きつつあえてこれらの困難・不利な状況に身を投じ時には進んで相手の土俵で戦う心意気を見せる.その姿は総合診療医がそれぞれの持ち場で場に合わせてさまざまな困難事例に対し柔軟に力を発揮する様子を彷彿とさせる.本書は総合診療の真骨頂の1つとも言える「診断」特に一筋縄ではいかない症例の診断がテーマでありなおのこと男塾に親和性を感じるのである.さらに男塾の登場人物らの熱い絆例えば男塾死(四)天王が命がけのスクラムを組み後輩たちを守る姿豪学連三面拳らの仲間への想い江田島平八塾長の後進への愛情これらが総合診療における臨床教育の現場にリンクすることも『魁!! 男塾』を総合診療における代表的バイブルと思う理由である.
このように総合診療の臨床・教育の心意気を男塾の精神とともに症例検討集という形に昇華させたのが本書である.ページを開くたび汗と気合喧々諤々の議論と白熱した空間が飛び込んでくるような症例検討の言語化を目指した.今回の破天荒な企画が型にはまらない若く新しい風として医学界に旋風を巻き起こすことを願っている.将来スピンアウトの企画が出ることも期待したい.
最後にこの自由な企画にGoサインを出してくださった医学書院と『medicina』編集室の皆様特に辛抱強く時に一緒に突っ走って企画を盛り上げてくださった落合崇さんそして『魁!! 男塾』作者の宮下あきら先生に心より厚く感謝を申し上げたい.
ちなみに本書に登場する医師5人の各キャラクターデザインは筆者が担当させていただいた.男塾を愛する読者の方々はプロフィールの肩書(塾長○号生)や人物紹介を見てすぐに察しがつくかもしれない.佐田竜一先生が江田島塾長綿貫聡先生が教官石金正裕先生が虎丸龍次忽那賢志先生が剣桃太郎そして志水が大豪院邪鬼であ