亡霊としての歴史 痕跡と驚きから文化人類学を考える / 太田好信/著
人類学再想像とその未来に向けた真摯な思考人類学再想像は著者年来の主張であるが、標題にはっきりと表れているように、今回はベンヤミン−タウシグ流の「アナクロニズム」的思考が理論的準拠点とされる。一例を挙げれば、ベンヤミンの「翻訳者の使命」中の有名な文句――「翻訳者の使命とは、異質な言語の内部に呪縛されているあの純粋言語をみずからの言語のなかで救済すること、作品のなかに囚われているものを改作のなかで解放すること」――を援用し、すでに了解済みとされ、顧みられなくなっているテクストに、ふたたび生命を見出す作業が繰り広げられる、例えばベネディクトの『菊と刀』やマリノフスキーの『西太平洋の遠洋航海者』の現代的可能性がスリリングに説かれることになる。付録として「人類学の必読書リスト」を付す。<br>